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GSX400  インパルス エンジン不調

2014年12月の作業です。

​お客様から「エンジンがかからない。」との電話を頂きました。

早速積載車でお客様の自宅へ引き取りに行ってきました。

​お客様も同乗して頂きました。

まずは問診です。

僕   「いつ頃からですか?。」

お客様 「昨日はなんとかかかったんですが、今日はかかんなくてバッテリーが上がってしまいました。」

僕   「夏はいかがでしたか?。」

お客様 「気持ちかかりづらかったけど2発くらいでかかっていました。」

僕   「ガソリンは新しいですか?。」

お客様 「わざと満タンにしないでその都度給油しています。」

僕   「始動直後、マフラーから出る排気ガスは黒かったですか?。」

お客様 「ええ。そう言われると黒かったような感じでした。

     あと、寒い時期になってもチョークを引かなくてもかかるんですよ。」

​僕   「わかりました」

キャブのオーバーフローだな。

ま~焦んなくてきちんと各部チェックしよう。

 良い火花

 良い混合気

 良い圧縮

​これが全て良ければエンジンは調子を取り戻せます。

まずは1番簡単な「良い火花」のチェック。

プラグを取ってプラグコードを刺してエンジンにあてがいます。

セルを回すと4気筒全てOK。

​思ったとおりプラグはかぶっている状態を確認。

お次は「良い圧縮」

コンプレッションゲージで測定です。

手持ちのアダプターを順番に取り付けますがここで問題発生!

まずい!

アダプターのホースのねじサイズが合わない。

​弊社はごくごく普通の修理屋なのでバイク用のサイズの小さいアダプターのホースがありません。

​どうしよう?

え~。また作るの~。

​作っても良いけどそん時だけで、2度と使った試しが無いんだよな~。

どうせ原因はキャブのオーバーフローだから圧縮圧力測定を省いちゃおうかな~。

いや。まてまて。先入観でやってたら診断ミスが有るかもしれない。

​お客様へ修理を断ることの選択肢がないので、1回限りのSSTを作ります。

大事なプラグのねじ部は、お客様のインパルスに装着してあったプラグ1本を利用します。

​どうせキャブのO/Hしなきゃエンジンかかんないので、プラグ1本の入荷はその時で間に合います。

毎度のことながら、プラグはなかなか壊れません。さすがNGK.

やばい!

4発とも低いじゃん。

測定していて良かったー。

だけどどうするの?

​まさか?。

エンジンオイルの量が異常に多いです。

​このあたりから修理への気持ちが切り替わります。

​おそるおそるエアクリーナーのアッパーケースを開けて見ると、、、。

思ったとおりエンジンオイルとガソリンの混ざった液体が想像以上にありました。

これが何を意味するか?

  エンジンオイルがガソリンで希釈された状態で昨日まで乗ってしまった。

​  オーバーフローによって、エンジンがかからない。

  エンジン停止時にシリンダー内へガソリンが流れ込む。

  シリンダー内壁の油膜を洗い流す。

  ピストンリング及びシリンダー内壁が減る。

  ブローバイガスが大量になる。

​  エアクリボックスにエンジンオイルとガソリンの混ざった液体がたまる。

  エンジンはキャブから供給されるガソリン以上のガソリン成分を吸入する。

​  可燃空燃比をはるかに上回るリッチの為エンジンがかからない。

何事も理論です。

​論理ではいけません。

お客様の目の前で作業をやっているので、どうしようか相談です。

電話では説明しきれないです。

一緒に来て頂いて良かった。

​圧縮測って良かった。

相談の結果、

  キャブO/H

  エンジンオイル交換

  エアクリーナーボックス清掃

​とりあえず圧縮が低いのは気になりますが、

上記作業をやってみて、普通に走れれば良いということになりました。

これだけ溜ってたら超オーバーリッチのはずです。

キャブをばらしてみると意外なことが判明しました。

​フロートがNo2   No4  の、2ケだけ交換されています。

お客様は地元、上越のバイク屋さんから半年前に購入されたらしいです。

ここからは僕の推測

  上越のバイク屋さんは中古車が売れたので納車整備を行った。

​  その時、オーバーフローの症状があったため必要最低限のフロート2ケを交換した。

​あとはリアタイヤが新品で車検2年付きだったそうです。

後日、フロート2ケ、各種Oリング類、各種パッキン類、SSTに使ったプラグ1本、希釈された

エンジンオイルを3回ほどエンジンの始動、停止を繰り返しながら交換(ミッション、湿式多板クラッチがある為)して、

本格的にエンジンの始動、暖機です。

非常にまずいです。

ブローバイガスが多すぎます。

アイドリングでこれだけのブローバイガスがエアクリボックスに流れ込みます。

キャブのMAS(ミクスチャー アジャスト スクリュー)調整以前の問題です。

では、ブローバイガスのホースを大気開放すると、、、。

これまた非常にまずいです。

調子が良くなってしまいました。

MASで2.5回転戻しでアイドリングが安定してしまいました。

​繰り返しますが、非常にまずいです。

ここから先は読み飛ばしてください。

絶対に読んではいけません。

​ちっとも面白くないつまらない超長文です。

道路運送車両法

第一章 総 則 (この法律の目的)

第一条 この法律は、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進することを目的とする。

《改正》平14法089

(定義)

第二条 この法律で「道路運送車両」とは、自動車、原動機付自転車及び軽車両をいう。

2 この法律で「自動車」とは、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをいう。

3 この法律で「原動機付自転車」とは、国土交通省令で定める総排気量又は定格出力を有する原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具をいう。

【則】第一条
《改正》平11法160

4 この法律で「軽車両」とは、人力若しくは畜力により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、政令で定めるものをいう。

【令】第一条

5 この法律で「運行」とは、人又は物品を運送するとしないとにかかわらず、道路運送車両を当該装置の用い方に従い用いること(道路以外の場所のみにおいて用いることを除く。)をいう。

6 この法律で「道路」とは、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による自動車道及びその他の一般交通の用に供する場所をいう。

7 この法律で「自動車運送事業」とは、道路運送法による自動車運送事業(貨物軽自動車運送事業を除く。)をいい、「自動車運送事業者」とは、自動車運送事業を経営する者をいう。

8 この法律で「使用済自動車」とは、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成十四年法律第八十七号)による使用済自動車をいう。

《追加》平14法089

9 この法律で「登録識別情報」とは、第四条の自動車登録ファイルに自動車の所有者として記録されている者が当該自動車に係る登録を申請する場合において、当該記録されている者自らが当該登録を申請していることを確認するために用いられる符号その他の情報であつて、当該記録されている者を識別することができるものをいう

道路運送車両の保安基準

【2015.07.01】第31 条(ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置)

(ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置) 第三十一条 自動車は、運行中ばい煙、悪臭のあるガス又は有害なガスを多量に発散しな いものでなければならない。 2 自動車は、排気管から大気中に排出される排出物に含まれる一酸化炭素、炭化水素、 窒素酸化物、粒子状物質及び黒煙を多量に発散しないものとして、燃料の種別等に応じ、 性能に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。 3 前項の規定に適合させるために自動車に備えるばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス 等の発散防止装置は、当該装置及び他の装置の機能を損なわないものとして、構造、機 能、性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。 4 内燃機関を原動機とする自動車には、炭化水素等の発散を防止することができるもの として、機能、性能等に関し告示で定める基準に適合するブローバイ・ガス還元装置(原 動機の燃焼室からクランクケースに漏れるガスを還元させる装置をいう。以下同じ。)を 備えなければならない。 5 普通自動車、小型自動車及び軽自動車であつて、ガソリンを燃料とするものは、炭化 水素の発散を有効に防止することができるものとして、当該自動車及びその燃料から蒸 発する炭化水素の排出量に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。 6 自動車の客室内の冷房を行うための装置の導管及び安全装置は、乗車人員に傷害を与 えるおそれの少ないものとして、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合 するものでなければならない。 7 自動車の排気管は、発散する排気ガス等により、乗車人員等に傷害を与えるおそれが 少なく、かつ、制動装置等の機能を阻害しないものとして、取付位置、取付方法等に関 し告示で定める基準に適合するものでなければならない。 8 法七十五条の二第一項の規定によりその型式について指定を受ける一酸化炭素等発散 防止装置は、当該装置を備える自動車を第二項から第四項までの基準に適合させるもの でなければならない。

警告を無視して全文読んだ方はいらっしゃらないと思うので、簡単に言うと

​お客様のインパルスは初度登録年月が平成8年なので、ブローバイガスを大気開放しちゃだめですよ。自分の出したガスは自分で吸ってね。ということです。

​(ブローバイガスとはなんぞや?とお思いの方はお気軽に「お問い合わせ」欄からご質問ください。

お好みに応じて説明を

10秒コース

1分コース

15分コース

   etc

各種ご用意しております。

さて、話を戻しましょう。

打開策1

​   発生するブローバイを正規の量にする。 

打開策2

​​   オイルキャッチタンクをつけてブローバイを大気開放する。

打開策1は最低でもピストンリングの交換が必要です。費用が跳ね上がります。

​打開策2は非常にリーズナブルな修理方法ですが、圧縮圧力が低いので本来の

    パワーの  1 / ワカンナイ  になり、乗っていて楽しいかどうかは不明。

ここから先は読み飛ばしてください。第2弾

絶対に読んではいけません。

​ちっとも面白くないつまらない超長文です。

業界の社会一般に対する姿勢

<<自動車整備事業者憲章>>
われわれ自動車整備車業者は、常に自動車社会における整備事業の公共性と責務の重大性を認識し、次の信念と意識をもって事業経営を行い、顧客及び社会に対する責任を果します。

  • 公平誠実な応接
    すべての顧客に対して公平と誠実をもって応接し、仕事に対して責任を持ちます。

  • 公正明朗な取引
    すべての作業と使用部品の内容を明示し、適正な料金で取引します。

  • 優秀なサービスの提供
    絶えず整備技術の練磨に努め、常に最高のサービスを提供します。

  • 正確な知識の提供
    自動車の構造、作用及び関係法令に関する正確な知識を提供し、整備販売に関するあらゆる相談に応じます。

  • 自然環境の保全
    自動車の安全、公害防止を通して、自然環境の保全に努めます。

  • 誇りと遵法の徹底
    整備事業について誇りと自信を持ち、経営のあらゆる面で遵法に徹します。

  • 豊かな社会づくりへの奉仕
    常に新しい社会との調和をはかり、省資源・無公害・安全を求め、より豊かで健全な自動車社会の建設に奉仕します。

簡単に言うと、弊社は認証工場の為(ツッツキどころ満載工場)

お客様へ保安基準に適合するようにアドバイスする立場です。

​的なことです。

はてさて、弊社がお客様にどのように対応したか気になりますか?

では発表します。

1 弊社でピストンリングを交換すると結構な請求金額が発生する。

​2 買ったバイク屋に、たとえ中古車でもフロートが2ヶ交換されているのに、なぜ4ヶ交換してくれなかったのか?

3 全部クレームとは言わないでピストンリング交換してもらって修理代を折半してもらったら?

​4 所詮低年式の中古車だから絶対に相談の姿勢で交渉したら?

​5 撮影した画像を印刷してお客様に渡した。

などなどです。

​結果、ピストンリングをクレームで交換してもらって、減っていたFタイヤを有償交換で話しがつきました。

​思ったよりも合計の修理費が安くなったので、お客様も喜んでいました。

​良かったです。

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